どくしょかんそうぶん:『日の名残り』

 

ここ最近読んだ中で一番面白かった。

日の名残り カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳
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カズオ・イシグロとわたし

カズオ・イシグロとはイギリスで活躍している日本人作家で、ほかの著作には「わたしを離さないで」などが有名。

自分は日本で放映されていた「わたしを離さないで」で初めてカズオ・イシグロを知ったのだが、その時は面白いドラマだなー、ぐらいの感想しかなく、原作があるということを特に知らなかった(三浦春馬さん。。。)

自分が興味を持ち始めたのは、ノーベル文学賞を受賞したころで、その時に「わたしを離さないで」は原作があることを知り、いつかちゃんと本で読んでみたいなと思っていた。

そして、つい半年前ぐらいに図書館でちょうど「わたしを離さないで」と「日の名残り」が借りれたので、読んだわけである。

翻訳作品でも楽しめるのか?

海外文学を読むにあたって一番のネックは、翻訳だと思っている。

慣れている人間なら、そこまで気にならないが、翻訳された文章というのは絶妙な言い回しがあったりして、受け付けない人はとことんダメだと思う。

僕は昔から慣れてはいたのだが、最近になって海外作品の読みにくさを認識しだしていたため、「日の名残り」を読み始めた時も、少し心配だった。

また誰が翻訳したのか、という点も問題である。

村上春樹訳の「ライ麦畑でつかまえて」を読んだ時は、野崎訳とは全然違ったので、かなりショックを受けた記憶がある。

野崎訳に最初に触れたからというのもあるかもしれないが、それほどまでに翻訳のさじ加減というのは海外文学を読むにあたっては重要なファクターである。

 

 

しかし「日の名残り」については、結論を言ってしまうと、最高に面白かった。

続きが気になって、寝る間も惜しんで読んだのは久しぶり。

主人公の執事が語る口調や仕草、イギリス風の少し皮肉が効いたセリフなど、作者が本当に日本人なのか疑いました。

あらすじとしては、長年執事をしている主人公がお暇ができたため、田舎に住んでいる古い同僚を尋ねるというもの。

しかし、これがどうにか面白い。

主人公の語り口がいちいちかしこまっていたり、昔の思い出を懐かしむシーンなどは、執事という仕事や主人を愛していたことを読み取れる。

話のあらすじが面白いというよりは、ただの文章が面白いというのは、本当に久しぶりの体験だった。

本というのは作家の文章の波長が合うのかどうかというのがハマる要素の1つだと思っているのだが、カズオ・イシグロに関しては自分と見事にハマっていた。

これから、著者の他の作品を読むのが楽しみである。

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